2023年 1級建築士設計製図課題発表

令和5年 一級建築士試験
「設計製図の試験」の課題

図書館

[要求図書]

  • 1階平面図・配置図(縮尺1/200)
  • 各階平面図(縮尺1/200)

※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。

  • 断面図(縮尺1/200)
  • 面積表
  • 計画の要点等

[建築物の計画に当たっての留意事項]

  • 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
  • バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
  • 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
  • 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
  • 構造種別に応じた架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
  • 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

[注意事項]

「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、建築基準法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。

課題検証

1. 課題テーマと時代背景

図書館は、図書館法により定められた施設であり、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」とされている。

2005年(平成17年)には「文字・活字文化振興法」が制定され、地域においては必要な数の公立図書館の設置及び適切な配置に努める事等が定められ、その後公立図書館が毎年数十館程度増加していた時期もあった。
紙の本(活字)に触れる機会という事では、現代においても「図書館」が持つ意味は大きいと考えられている。

新型コロナウィルス感染症の拡大は、私たちの生活に様々な影響を与えた。特に「緊急事態宣言」の期間においては、サービス・飲食業だけでなく図書館などの公共施設も休館を余儀なくされた。
子どもの読書に関する資料によれば、平均読書冊数は増加しているものの、2018年以降減少傾向にあった「不読率」は、2021年を境に、小・中・高等学校ともに上昇しており、特に小学校低学年や入学直後の学年で顕著なことから、一斉休校や自宅学習の増加によって図書に触れる機会が失われたことが考えられる。

すべての子供たちが読書活動の恩恵(読解力・思考力・表現力の養成)を受けられるように掲げられた基本方針では、「読み聞かせ等の促進」「総合的(探求的)な学習活動での図書館利用」「図書館のDX化を進める」などが盛り込まれている。

コロナ禍の状況下で注目されたのが、24時間いつでも、どこからでも電子書籍が借りられる電子図書館サービスである。電子書籍は、調査や学習において非常に有用で、大学図書館を中心に利用が広がり、現在では500館以上の公共図書館が電子図書サービスを導入している。
また、電子書籍はオーディオブック(読み上げ)機能や、多言語化など、多様性やバリアフリーにも大きく貢献している。

今年の課題「図書館」についても、こうした現在の社会背景などを視野に入れて考えることが必要であると考えられる。

※「第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(R5.3.28)

DX(デジタルトランスフォーメーション)化:デジタル技術による変革

「図書館」について

図書館の基本機能

  1. 1.閲覧・貸出機能
  2. 2.レファレンス機能
  3. 3.地域資料整備
  4. 4.生活情報センター機能
  5. 基本機能に以下の機能を付加することがある
  6. 5.視聴覚機能(音声、音楽、映像など)
  7. 6.電子化作業機能
  8. 7.集会機能(朗読会・読み聞かせ)
  9. 8.その他

以上のような状況を踏まえた課題対策が、合否を分ける重要なポイントとなる。

2. 過去の類似出題について

「図書館」の出題としては、2012年(平成24年)「地域図書館」がある

なお、その年はサブテーマとして、「段床形式の小ホールのある施設である」と指定され、2階建ての設定で、集会部門の中で「小ホール(段床形式:180席)」が要求されていた。

[構造種別は自由、地下1階、地上2階建てで、床面積の合計は1,800m2以上、2,200m2以下]

  • なお、2階の梁伏図の要求があった。
  • また、過去の類似課題は、以下のとおりである。
  • ・1997年「緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館」
  • ・1992年「アトリウムと小ホールをもつ地域図書館」
  • これらの他にも、図書室が要求された課題は多く、
  • ・2016年「子ども・子育て支援センター」
  • ・2007年「子育て支援施設のあるコミュニティセンター」
  • ・2003年「保育所のある複合施設」

などがある。

近年の課題においては、梁伏図の要求がなく、1階平面図及び、各階平面図の出題となっている。階数提示はないが、建物用途を考えると基準階(同一平面が複数階)となる可能性は低く、まず、地上3階建ての構成をしっかり理解しつつ、地下1階の対応も考慮して計画できるようにすることが良い。

3. 計画上のポイント

図書館を計画する上で、次のようなポイントが考えられる。

建築計画

  1. ① アプローチについては、車でのアクセスや自転車による来館も考慮し、利便性と安全性に配慮する。管理サービスのアプローチと交錯しない配慮が必要となる。
  2. ② 建物の配置については、敷地形状、屋外施設の位置、隣接建物との関係、採光条件、道路斜線制限などを考慮して決定する。
  3. ③ 動線計画としては、来館者の動線、運営スタッフの動線、搬出入の動線を考慮することが必要である。
  4. ④ 平面計画では、書架の間隔や閲覧席の配置、会議室や集会室の面積想定などを理解しておく必要がある。

構造計画

  1. 3階建てから5階建て程度まで想定でき、階数による構造部材断面について対応できるようにしておく必要がある。
  2. ⑥ 構造種別は鉄筋コンクリート造が想定される。架構形式については、純ラーメン架構以外に耐力壁付きラーメン架構についても理解しておく必要がある。

設備計画

  1. ⑦ 設備計画については、設備機器や設備シャフト等の位置に注意が必要である。
    設備シャフトについては、給排水用シャフト(PS)、空調用シャフト(DSまたはPS)、電気用シャフト(EPS)をそれぞれ計画する必要があり、その位置及び寸法についても正しい把握が必要である。
  2. ⑧ 設備としては、受変電設備(キュービクル)、受水槽、空調設備(空調機械室や室外機置場等)、停電時や消防設備のための自家発電機等が想定される。設置する場所及びその寸法については正しく理解しておくことが必要である。
  3. ⑨ 設置する設備によっては使い勝手が向上したり、災害時の機能が付加されたりすることがある。設備機器の特性についても理解しておくと、より良い設備提案が可能になる。
  4. ⑩ 近年は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)について考慮する場合、太陽光発電パネルの設置等にも配慮が必要である。

法的計画

  1. ⑪ 建蔽率の上限や高さ制限に違反した計画は、「重大な不適合」に該当し失格となる。また、延焼のおそれのある部分や防火区画、避難施設についても、法的内容の中でも非常に重要な項目であり、重大な不適合(失格要件)に該当することや大きな減点になることがある。
    課題において挙げられた法規を遵守することは絶対条件である。
  2. ⑫ 近年の出題を考慮すると、建蔽率、容積率や高さ制限(斜線制限等)については対応できるよう算定方法等を確認しておく必要がある。

4. 計画の要点等

例年、計画の要点が 7~10問程度要求される。

建築計画(法令含む)・構造計画・設備計画(環境負荷・省エネ含む)において配慮した事項を記述式で要求されるが、重要なのは、実際に計画した建物と記述した内容に不整合がないことである。
建物の計画が優れていても、記述との不整合があれば、採点者の印象を下げ、大きな減点を受ける可能性が高いと言える。

計画の要点等の記述については、暗記した内容をそのまま記述するのではなく、設問で問われていることについて、内容を正確に理解した上で的確な記述をすることを心がける必要がある。

更に、近年の出題傾向としてイメージ図(近年は、平面詳細図・断面詳細図等の要求もある)の記入は必須となっており、記述内容についてわかりやすく図式化することを練習しておくことが必要である。

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今回の課題である「図書館」は、ある種不変な役割をもつ公共施設と言えます。利用者の自由な活動を保障する公共施設 として、図書館自体が自由な立場から利用者にサービスを提供する位置にあって、双方の可能性をさらに広げる歩みが絶え間なく続きます。また、近年では図書館に様々な要素を取り入れた複合型の施設が増加し、多様化する現代社会を反映しているとも言えるのではないでしょうか。

前回の図書館に関する出題は、2012年の「地域図書館(段床形式の小ホールのある施設である。)」でしたが、今回は設計に関する条件が付けられていません。図書館の設計でも、立地条件、適切なゾーニングと動線計画、構造計画、環境負荷低減、防犯、経済性、自然採光、周辺 環境への配慮、緑化、アプローチ制限などの従来の要素は不可欠ですが、最近は「CASBEE-ウェルネスオフィス」「WELL認証」などの建物利用者の健康にも配慮した建物の仕様、性能に注目が集まっています。

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