【2025年度最新】宅建試験の権利関係(民法など)の攻略方法について解説!
宅建試験で出題される権利関係(民法など)は、10年ほど前までは「あまり時間をかけて学習しなくても良い(一部捨てても良い)」と言われていました。しかし、近年の宅建試験は高得点化傾向にあり、権利関係でも14問中8問程度は得点できないと厳しい状況にあります。そこで本記事では、権利関係の概要や、出題数、勉強方法などについて解説していきます。宅建士の取得を目指している人には役立つ記事になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 権利関係の傾向分析・得点目標
- ■民法総則
- ■物権
- ■債権・相続(特に近年の法改正が多い分野)
- ■借地借家法
- ■区分所有法
- ■不動産登記法
- 権利関係の全体構造と学習方法
- ■権利関係とは
- ■民法とは
- ■「契約」を理解しよう
- ■「特約」「判例」とは何か
- ■「特別法」とは
- ■権利関係を攻略するために
権利関係の傾向分析・得点目標
権利関係での出題数は計14問で、民法10問、特別法(借地借家法・区分所有法・不動産登記法)4問という内訳です。また、民法では平均すると、「総則・物権(担保物権を含む)」と「債権・相続」の出題数は、おおむね半々となっています。
学習すべき範囲が最も広く、また、難度も高いため、出題傾向を十分に分析して、やることを充分に絞り込んで学習したい分野です。ここでの学習に手間取ると、宅建試験での得点対策としてより重要な他の分野の学習がおろそかになってしまいますので、学習すべき量はあくまで「全体の1/4程度」というイメージをもつのがよいでしょう。
権利関係での学習方法は、応用力を要する問題に対応できるよう、「理由を考えながら学習を進める」という点に尽きます。得点目標は、民法で10問中5問、借地借家法等の特別法関連で4問中3問、合計14問中8問以上です。以下で主要な各テーマの"攻略ポイント"を解説します。
民法総則
「意思表示」「代理」は、出題頻度も高く、正答率も高い項目です。内容的にもまんべんなく出題されていますから、マトを絞りすぎないで、条文レベルの知識はもちろんのこと、重要判例もしっかりマスターしておく必要があります。
一方、「制限行為能力者」「時効」は、出題頻度こそ「意思表示」「代理」と比べれば低いですが、やはり正答率が比較的高い項目です。特に、制限行為能力者では未成年者と成年被後見人にウェイトを置いて、学習するとよいでしょう。
物権
「物権」では、「不動産物権変動」と「抵当権」からの出題頻度が圧倒的ですが、この2項目は難問が多く出題されるため、正答率も低くなっています。合格することだけを考えれば、基本的事項の学習にとどめて、深入りしないことが大切です。
その他では、「共有」と「相隣関係」が大切です。この2項目は正答率が高く、出題された際には手堅く得点しておきたい箇所ですので、しっかり学習しましょう。
債権・相続(特に近年の法改正が多い分野)
「債権」は、学習範囲が広く難度の高い項目も多いため、優先順位を決めて学習したい箇所です。出題頻度と正答率を勘案すると、最優先項目は、売買をベースとした債務不履行・契約の解除・契約不適合(担保)責任、そして、賃貸借です。
また、次に保証・連帯債務、不法行為と続きますが、当初はあまり手を広げず、まずは最優先項目に集中して取り組みましょう。なお、相続に関しては、法定相続と遺言関係のどちらも、しっかり学習しておく必要があります。
借地借家法
「借地」1問・「借家」1問と、毎年のように2問出題されています。まずは、出題頻度の高い存続期間・更新・対抗要件等を学習した後、定期借地権、定期建物賃貸借といった頻出項目をマスターしましょう。
区分所有法
毎年1問出題されていますが、深追いしてはならない科目です。管理者・規約・集会といった、区分所有建物の管理面で問題となる項目を、最優先に学習しましょう。
◇不動産登記法
不動産登記法も、毎年1問出題されていますが深追いは禁物です。権利に関する登記と表示に関する登記の特徴や、権利に関する登記のうち、所有権保存登記・仮登記といった項目に集中しましょう。
権利関係の全体構造と学習方法
権利関係とは
宅建試験の出題範囲のひとつに、「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること」という科目があります。具体的には、民法、及び特別法である借地借家法・区分所有法・不動産登記法で、宅建受験界では、これらを「権利関係」と呼んでいます。
民法とは
民法は、市民の間に発生したトラブルを解決する際の判断基準です。
例えば、4,000万円相当の価値がある土地を所有する地主Aさんが、悪徳開発業者Bにだまされて、その土地を2,000万円で売る契約をしてしまった、というような場合、Aさんは救済(契約の取消し)を求めることができます。
そして裁判所は、BがAさんをだまして契約をしたという事実を確認した場合は、次の条文に基づいて、「AさんはBとの間の売買契約を取り消せる」という判決を下します。
【民法 第96 条第1項】
詐欺(さぎ)又は強迫(きょうはく)による意思表示は、取り消すことができる。
このように、民法は、紛争を解決する際に判断基準となる「モノサシ」といえるのです。
「契約」を理解しよう
それでは、「売主Aさんと買主Bさんが家屋の売買契約を締結する」という場面を想定しましょう。
この売買契約の成立によって、AさんはBさんに対して、建物を引き渡す義務を負う代わりに、代金を支払うよう請求できる権利(代金請求権)を手に入れます。その一方で、BさんもAさんに対して、代金を支払う義務を負う代わりに、建物を引き渡すよう請求できる権利(建物引渡請求権)を手に入れます。
そうして発生したお互いの権利を大事にするために、Aさん・Bさんは、好き勝手に契約をなかったことにすることはできません。契約を無視すると、契約違反(債務不履行)として、相手方から損害賠償を請求されたり、裁判所の判決によって、契約の内容を実現するよう命ぜられることがあります。
このように、契約はいったん成立すると、当事者を拘束する力をもち、また、裁判所によって"強制的に"契約の内容を実現させることも可能となるのです。
「特約」「判例」とは何か
民法は、全部で1,050もの条文がありますが、宅建試験では、そのすべてから出題されるわけではありません。しかも、条文そのものからだけではなく、「特約の効力」や「判例」などからも出題されます。
当事者が法律の規定と違う取り決めなどをしたときの約束事を、特約といいます。民法では、特約は原則として有効ですが、「すべて有効」となるわけではなく、「強行規定」に反するものは無効となります。
なお、強行規定とは、強制的に法律の規定を適用させるためのルールであり、特約に優先します。一方、「任意規定」とは、当事者が特約をしたときは、その特約が法律の規定に優先するものをいいます。例えば、民法の規定のうち、「債権」の規定の多くは、任意規定です。
そして、「判例」とは、裁判所が具体的な事件を解決するために出してきた判決のうち、おおむね法解釈として定着しているものをいいます。条文に規定がなかったり、その条文の規定の解釈に争いがある場合には、判例が解決のルールとなります。
「特別法」とは
「特別法」とは、「ある特定の場合に民法に優先して適用される法律」のことです。
例えば、不動産の賃貸借においては、特別法である借地借家法の規定が優先適用されます。そのため、民法の賃貸借の規定は、借地借家法が規定していない部分についてのみ、補充的に適用されるにすぎません。
また、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)は、分譲マンションの権利関係において優先適用される特別法であり、不動産登記法は民法によって定められた権利関係が具体的に外から見えるようにするための手段である、登記手続について定めた特別法です。
権利関係を攻略するために
「権利関係」を学ぶことは、「宅建業法」や、「法令上の制限」といった他の分野の法律を理解するための基礎となります。
法律の趣旨をしっかり理解しよう
例えば、債務不履行と不法行為という2つの制度のどちらにも「損害賠償」という同じ言葉が出てきます。単に丸暗記しても意味がないので、それぞれの制度がどのような目的を持つのか、そしてどのように異なるのかを、理解することが重要です。
図を描こう
例えば「AのBに対する債務について、CがAの連帯保証人となるとともに、Aの所有地にBの抵当権を設定し……」という本試験の出題を見て、すぐに図を描きながら考えられるようになるためには、普段からの練習が必要です。
まず、テキストや参考書などの「図やイラスト」を参考に、自分で図を描いてみましょう。特に過去問題を解くときには、なるべく図を描きながら解くように心がけましょう。
\\本試験問題にチャレンジ//
令和6年度宅建試験 第3問 共有
<正答率62.9% ※日建学院調べ>
甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分を有していて、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Dの共有持分は、相続財産には属していないものとする。
1 甲土地に、その形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加える場合には、共有者の過半数の同意が必要であり、本件ではA、B、C3人の同意が必要となる。
2 甲土地の所有権の登記名義人となっている者が所有者ではないEである場合、持分に基づいてEに対して登記の抹消を求めるためには、所在が判明しているA、B、Cのうち2人の同意が必要である。
3 A、B、C3人の同意があれば、甲土地を資材置場として賃借したいFとの間で期間を3年とする賃貸借契約を締結することができる。
4 Aが裁判所に請求して、裁判所がDの持分をAに取得させる旨の決定をした場合、Dは、その決定から3年以内に限り、Aが取得したDの共有持分の時価相当額をAに対して支払うよう請求することができる。
------------------------
1:誤り 共有物の重大変更→共有者全員の同意が必要。
2:誤り 各共有者は単独で保存行為ができる。
3:正しい 土地については、5年を超えない短期賃貸借が、持分の価格の過半数の同意で可能。
4:誤り 他の共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる裁判→支払請求期間に制限なし。
------------------------
ワンポイント解説
合格者と不合格者の正答率が、約34%と大きく差が付いた問題でした。令和5年の「所有者不明土地関連」の民法改正の目玉の一つです。問われている内容自体は、肢4が細かいほかは、基本的な内容ですので、日建学院の改正法セミナーなどでの情報収集力の差が顕著に出た問題でした。
まとめ
権利関係は、出題範囲が広くネタがてんこ盛りなので、得点しにくい難問が、毎年数問は必ず出題されています。
本試験までの学習時間は、限られています。権利関係については「ムリをせず、トコトン深追いするのはやめる」という方針をとることが、合格するための効率的な学習法といえるでしょう。
権利関係はどうしても理解できない、得点できないという方は、ぜひ日建学院まで相談してください。難解な法律用語や法令でも分かりやすく理解できるよう、さまざまなカリキュラムや教材が用意されていますので、初心者の方にもおすすめです。