【2025年度最新】宅建試験の法令上の制限とは?
出題範囲や問題数、攻略方法について解説!
法令上の制限は、宅建試験の中でも出題数は少なめですが、出題範囲や問題の難易度を考えると「大きな得点源」とすべき科目です。しかし、"その道ならではの専門知識"を求められる、最もプロフェッショナルな科目のため、苦手に感じる人が多い科目でもあります。そこで本記事では、法令上の制限の近年の出題傾向や攻略ポイントを分かりやすく解説していきます。この記事を読んで、"専門家"を目指しましょう!
目次
- 法令上の制限の傾向分析・得点目標
- ■都市計画法
- ■建築基準法
- ■上記以外・「その他の諸法令」
- 法令上の制限の全体構造と学習法
- ■「法令上の制限」とは
- ■法令上の制限の全体像
- ■「法令上の制限」の攻略法
- ■過去問を繰り返し頻出問題を重点的に勉強する
法令上の制限の傾向分析・得点目標
法令上の制限は、近年の宅建試験では毎年8問出題されています。そのうち、都市計画法と建築基準法が例年2問程度、農地法と土地区画整理法、宅地造成等規制法は、例年1問程度出題されます。権利関係、宅建業法とともに「主要3科目」と言われていますが、特に暗記の占める比重が大きく、他の分野よりも合理的・効率的な学習対策が必要な分野といえるでしょう。
法令上の制限で特記すべきこととして、学習の初期に苦手意識を持つ受験者が多いことが挙げられます。
非日常的で専門的な用語が多用されている行政法規のため、やむを得ないといえますが、条文に忠実な出題が多いことから、ある程度まで学習をすると実は得点しやすい分野といえます。
また、実は「合格者と不合格者の差が最も大きい分野」でもあり、合格者は法令上の制限で確実に得点を稼いでいます。出題範囲が比較的安定していることから、得点目標は8問中6問以上です。以下で、法令上の制限における"攻略ポイント"を解説します。
都市計画法
「都市計画法」は、なんといっても「開発許可制度」の理解を最優先させるべきです。許可の要否・許可手続・建築制限といった細目に至るまで、全般的にしっかり学習してください。
建築基準法
「建築基準法」は出題範囲が広く、そのわりに出題数が少ないため、得点しにくい科目です。深追いは避けてまずは「集団規定」に絞って学習しましょう。
上記以外・「その他の諸法令」
「盛土規制法(旧・宅地造成等規制法)」、「農地法」、「国土利用計画法」の問題は、失点できないと考えて、テキストの読み込みと過去問の繰り返しを実践しましょう。
それに対して、「土地区画整理法」は深追いを避け、頻出分野に絞った合理的な学習を心がけましょう。
なお、「国土利用計画法」については、年によっては「単独で1問」(計4肢)ではなく、「その他の諸法令」の中での1肢としてのみ出題されることもありますので、学習時間の配分などに注意しましょう。
法令上の制限の全体構造と学習法
「法令上の制限」とは
宅建業者は、不動産の取引が成立するまでの間に、宅建士に「重要事項の説明」をさせなければなりません。
その説明事項の1つに、「都市計画法・建築基準法その他法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要」という事項があり、具体的には、都市計画法・建築基準法・盛土規制法・土地区画整理法・農地法・国土利用計画法等で構成されています。いずれの法律も、「土地の利用等に対して一定の制限を加える」という共通の性質があることから、これらは、「法令上の制限」と総称されています。
宅建士として「重要事項の説明」を的確に行うためには、この「法令上の制限」の知識が絶対不可欠となります。そのため、宅建試験でも出題される分野となっています。
法令上の制限の全体像
法令上の制限の全体像を理解するためには、「どの規制がどの段階で行われるのか」ということに着目して、学習するとよいでしょう。
段階 | 規制の種類 | 法令 |
---|---|---|
第1段階 | 土地を購入する段階での規制 | ①国土利用計画法 ②農地法 |
第2段階 | 土地を造成する段階での規制 | ①都市計画法 ②土地区画整理法 ③盛土規制法 |
第3段階 | 建物を建築する段階での規制 | ①建築基準法 ②都市計画法 ③土地区画整理法 |
以下で、この「3段階」に分けて、全体像を解説します。
第1段階 ~土地を購入する段階での規制~
例えば、ある土地にマンションを建てたいと考えた場合、まずは土地を取得する必要があります。この段階では、国土利用計画法や農地法などによる規制がメインとなります。
①国土利用計画法
地価が上昇しすぎると、国土の合理的な利用を図ることが難しくなります。そこで、国土利用計画法は、一定面積以上の土地を取引する場合に、都道府県知事等への届出をさせるなどの規制を行って、地価の抑制を図っています。
②農地法
食料の自給を確保するためには、まず、米などを生産する農地を守らなければなりません。そこで、生産の減少をまねくおそれのある農地の「宅地化」などについて、農業委員会や都道府県知事等の許可を必要とし、その制限をしています。
第2段階 ~土地を造成する段階での規制~
入手した土地がそのまま建物を建てることができないような地形である場合などには、建物を建築する前に土地の造成を行う必要があります。この段階では、都市計画法、土地区画整理法、盛土規制法などによる規制がメインになります。
①都市計画法
街づくりを計画的に行うためには、街づくりのプランを作るだけでなく、プランどおりの街になるように、土地の造成工事や建築物の建築をコントロールしなければなりません。そこで、都市計画法は、建築物を建築する目的で土地の造成工事を行う場合に、都道府県知事の許可(開発許可)を必要とするなどの規制を行っています。
②土地区画整理法
雑然とした区画の街を、道路や公園が整備された整然とした街にするためには、土地の区画を整理することになります。このような区画整理の手法を定め、あわせて造成工事等の規制を行っています。
③盛土規制法
盛土や切土などを行う場合、崖崩れなどの災害が発生するおそれがあり、それを防止しなければなりません。そこで、盛土規制法は、「災害のおそれが高い」とされた一定の場所で宅地造成等工事を行う場合には、都道府県知事の許可が必要とされるなどの規制を行っています。
第3段階 ~建物を建築する段階での規制~
造成した土地に建物を建築する段階では、建築基準法などの規制が大きく関与します。
①建築基準法
土地を取得して造成工事が完了したとしても、どんな建物でも建ててよいわけではありません。やはり、安全面に問題があったり、周囲の環境に悪影響を及ぼすような建物の建築を防止する必要があります。また、調和のとれた街づくりを行うために、建物の用途・形態・高さなどを規制しなければなりません。そこで、建築基準法では、建物を建築する際のさまざまな基準を定めています。
②都市計画法
計画的な街づくりをするために、都市計画法は、さまざまな都市計画を定めていますが、その計画を実現するために、建築物の建築行為も規制されます。
③土地区画整理法
土地の区画を整理する事業を行うためには、土地の造成工事だけでなく、同様に建物の建築も制限すべきです。そこで、土地区画整理法は、区画整理を行う場所で建築物の建築を行う場合にも、都道府県知事等の許可を必要とする等の規制を行っています。
以上のように、「法令上の制限」で出題される法律は、それぞれ明確な目的に沿って具体的に規制を行っていることがわかります。長くて複雑な用語が条文中に多く、一見難解そうに見えるのですが、押さえるべきポイントは限られていますので、各法令のポイントを理解しながら学習を進めましょう。
\\本試験問題にチャレンジ//
令和6年度宅建試験 第20問 土地区画整理法
<正答率61.9% ※日建学院調べ>
甲土地区画整理法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、この問において、同法第136条の3による大都市等の特例及び条例で定める事務処理の特例は考慮しないものとする。
1 仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地又は仮換地について仮に使用し、若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができる。
2 市町村施行の土地区画整理事業において、市町村は、換地処分をした場合においては、その旨を公告しなければならない。
3 換地計画において定められた保留地は、換地処分の公告があった日の翌日において、施行者が取得する。
4 施行者は、仮換地を指定した場合において、特別の事情があるときは、その仮換地について使用又は収益を開始することができる日を仮換地の指定の効力発生の日と別に定めることができる。
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1:正しい 従前の宅地の所有者等は、仮換地を従前の宅地と同じ使用収益ができる。
2:誤り 市町村が換地処分→知事が公告。
3:正しい 保留地は、換地処分の公告があった日の翌日に、施行者が取得。
4:正しい 特別の事情→使用収益開始日を仮換地の指定効力発生日と別に定めることが可。
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ワンポイント解説
法令上の制限で特徴的な「専門用語」が並び、かつ、近年の宅建試験の傾向である「長文」が選択肢1で出題されました。専門用語と長文で、一見難しい内容に見えますが「問われている内容」は条文そのままのような内容で、合格者と不合格者の正答率が、約44%と令和6年度の宅建試験で1番差が付いた問題でした。
◇「法令上の制限」の攻略法
「法令上の制限」は、他の科目に比べて、暗記を要する重要な事項や数字が多いことがひとつの特色です。
例えば、建築基準法における建ぺい率や容積率、用途地域の規制などが挙げられます。また、各法律に類似していて紛らわしい用語があり、それらをすべて正確に理解するのは至難のワザです。しかし、まったくの理解なしで片っ端から暗記していくのは、あまり効率的とはいえません。
根拠から覚える
法令上の制限は、法令や数値などの暗記がメインになりますが、やみくもに覚えても効率の悪い勉強になってしまいます。
そこで、それぞれの法令の根拠をしっかりと理解した上で、暗記することが望ましいです。各法令には、それを規制する何かしらの理由があるため、その因果関係とセットで知識を暗記していくと効率良く覚えることができます。
特に、都市計画法の中の「区域区分」や「用途地域」は、全体の土台にもなっているので、ここの流れから覚えていくと良いでしょう。
過去問を繰り返し頻出問題を重点的に勉強する
法令上の制限に関する問題は、過去問の内容の形式を変えて再び出題されることが多いです。
したがって、過去問を何度も繰り返し解いて各法令の理解を定着させることが効果的です。さらに、法令上の制限に関する問題は、専門用語が多く含まれるため、過去問を通じて、問題文の意味をスムーズに捉える練習を繰り返す必要があります。
重要なのは、過去に出題された範囲に絞って、繰り返し学習することでしょう。言い換えれば、過去問で何度も出題された項目は徹底的に潰していくことが大切で、それが得点する一番の近道といえます。 ポイントをしっかり絞って、「法令上の制限」を上手に攻略しましょう!
まとめ
法令上の制限は、普段聞き慣れない難しい用語が多いですが、要点をおさえて効率よく勉強していけば確実に得点源とすることができます。
色々な勉強方法を試して、ご自身に合うものを見つけてみてください。
法令上の制限は苦手だ、理解できないという方は、ぜひ日建学院まで相談してみてください。日建学院では、さまざまなカリキュラムや教材が用意され、サポートも充実しており、初心者の方にもおすすめです。