※このテクニカル講座は、 Ver 3.38 を基に作成しております。
 

【Ver3.38】よりパースの[着色画面出力]コマンドには、「フォトンマッピング」という描画手法を使った画像出力機能が追加されました。これまでの「レイトレーシング」([影付け]・[映り込み]など)との違いについて解説していきたいと思います。


 
[画面出力]メニュー/[着色画面出力]コマンドからは、大きく分けて3種類の描画方法で画像を作成することが出来ます。
 
 
 通常描画
オプションを全て外した場合、画面に表示されているままの画像が作成されます。
 
 レイトレーシング
部屋ごとに物体に直接当たった光のみを反映させて 描くパースの作り方。
「影付け」「ハイライト」「映り込み」「影ぼかし」「照光シミュレーション」のオプションを使用した場合、レイトレーシングという描画の手法を使って画像を作成していきます。影ぼかしの詳細設定ではぼかしの強さと精度を設定することが出来ます。
※ 物体に直接当たった光のみなので、光の反射を反映させるために一時光源を設定するとより高品質な画像が作成されます。
 フォトンマッピング
部屋にはとらわれず、物体に当たった光の反射まで反映させて描くパースの作り方。
「フォトンマッピング」のオプションを使用した場合に、フォトンマッピングという描画の手法を使って画像を作成していきます。詳細設定でフォトンの数などを設定することが出来ます。
※ 光の反射まで反映させるので、レイトレーシングに比べて画像作成に時間がかかることが多いです。
 
レイトレーシングとフォトンマッピングの違いについては次のステップで解説します。
 
 
作成時間が多くかかるフォトンマッピングのほうが、高品質のパース画像が出来るとは限りません。場合により、レイトレーシングに一時光源等を入れたほうが効果が大きい場合もあります。
ここでは、いろいろな場合について解説していきます。
※ レイトレーシングのパース画像については、「影付け」「ハイライト」「映り込み」をチェックした状態で作成しています。
 
 外観(昼間)
部屋の電気をすべて消灯した状態でパース画像を作成しています。
 
レイトレーシングは物体に当たった光の影しか作成されないので、全体的にマットな絵が作成されます。
2階の屋根の軒下の部分と1階玄関のポーチの辺りに一時光源を設定し、光が反射したようなイメージを表しています。
   
詳細設定:「屋外 昼 − 標準」
光の反射まで考慮されたパース画像が作成されます。光源は太陽の光しか無いにもかかわらず、影の中にも微妙な明暗が存在することに注目して下さい。
 
 
 外観(夜)
夜の設定は の[太陽光の色]を「夜」にすることをお勧めします。
 
外灯の光と多少の太陽光が物体に当たった光のみで描画しています。室内の光は外部には影響を与えません。
2階南面の左右の引違サッシ部分と東面の屋根の軒下部分と1階ポーチ部分に一時光源を設定し、室内からの光が反射したようなイメージを表しています。
   
詳細設定:「屋外 夜 − 精細」
光の反射まで考慮されたパース画像が作成されます。
 
 
 内観(昼間・照明有)
内観図をフォトンマッピングで画像作成する場合は、視界に入らない部屋の照明を消灯することをお勧めします。(視界に入ってない部屋にも均等にフォトンが設定されます。)
 
太陽の室内に対する環境光と室内光源によりパースが作成されます。位置をずらした複数の光源が存在することでレイトレーシングの弱点である影の中のトーンの乏しさを緩和してくれます。
光源の数や光自体が少ないと、室内では太陽からの直接の光は入りますが、反射がない為、影の部分は明暗の無いべったりとしたやや不自然な絵になってしまいます。
   
詳細設定:「屋内 昼 − 精細」
太陽や室内光源の反射まで考慮された美しいパース画像が作成されます。
詳細設定:「屋内 昼 − 精細」
故意に太陽光が室内に入らないう設定しているため、室内のフォトンが不足してしまい、ややムラの多いパース画像になってしまいます。
 
 
 内観(昼間・照明無)
昼間、照明のない状態の室内パースをフォトンマッピングで作成する時は、フォトン総数を多めに設定することをお勧めします。
 
太陽からの直接光以外は太陽の室内環境光のみなので明暗の変化のないパース画像になってしまいます。
壁や床、天井からの反射光を補うために、一時光源を窓の前や床面、天井面近く数箇所配置すると、柔らかな昼間の光を表現することができます。
   
詳細設定:「屋内 昼 − 精細」
窓を大きくとり、太陽の角度を調整してより室内に光が多く入るように設定すれば、照明器具がなくても反射光により美しいパース画像が作成されます。ただし、奥のキッチン部分のように光のあまり届かない部分は、ややマットになりやすくなります。
詳細設定:「屋内 昼 − 精細」
フォトンマッピングで作成しても、光の量が不足すればレイトレーシングとあまり変わらない画像になってしまいます。
 
 
 内観(夜・照明有)
夜の室内の画像をフォトンマッピングで作成する時は、太陽を含め、他の部屋の照明を全て消灯にして作成すると、フォトンが有効に配置できるので、総フォトン数が少なくても美しいパース画像を作成することができます。
 
位置をずらした光源が複数存在するのでそのままでも充分美しいパース画像が作製されます。
反射光を補うための一時光源を天井と床面近くに配置することで一層柔らかなパース画像を作成することができます。今回は暖かな雰囲気を出すために一時光源をやや黄色みがかった色に設定してみました。
   
詳細設定:「屋内 夜 − 標準」
グラデーションの美しい夜の室内パース画像はフォトンマッピングの最も得意とする状況のひとつです。
 
 
 
一時光源の設定方法について説明します。
※1 一時光源はレイトレーシングでパース画像を作成する時のみ反映されます。
※2 一時光源は一時的なものです。パースの作業終了をすると無効になるコマンドです。
 
[設定]メニュー/[光源]/[一時光源設定]を選択します。

[一時光源の設定]ダイアログが表示されます。
[光源の高さ]を設定して、右下に表示されている、平面図内で一時光源を追加する場所をクリックします。

平面図内とパース内に一時光源のマーク(
)が表示され、[一時光源の設定]ダイアログのリストに光源が追加されます。

複数の一時光源を設定する時は、[追加]ボタンが選択されていることを確認して同様の作業を行ってください。
 
 
 
ダイアログ内の[再描画]ボタンを押すと、光源データが再作成され、一時光源を考慮したパースが表示されます。
一時光源を設定した部分が明るくなっています。
※ 一時光源は影のないパース画面上ではうっすらとしか確認することが出来ません。レイトレーシングでパース画像を作成して効果を確認してください。
 
 
 
 
移動したい一時光源をリストから選択します。
※ 選択された一時光源は、平面図内とパース内で赤く表示()されます。
 
平面図で新たに光源を設定する場所をクリックします。光源の場所()が移動します。パース画面上に反映させたい場合は、[再描画]ボタンをクリックしてください。
※ 新たに光源を設定する場所が、元の場所と近いと移動できません。近い場所に移動したい場合は、一度離れた場所に移動してから再度設定してください。
 
 
 
高さを変更をしたい一時光源をリストから選択します。
※ 選択された一時光源は、平面図内とパース内で赤く表示()されます。


[一時光源の設定]ダイアログ内で光源の高さを入力します。
※ 次の作業(別の光源を選択など)に移ると、光源の場所()が移動します。
 
 
 
光源の設定をしてみます。
 
光源の設定をする一時光源をリストから選択します。
※ 選択された一時光源は、平面図内とパース内で赤く表示()されます。



[光源パラメータ]ボタンをクリックして、[光源の設定]ダイアログを表示させます。
各種設定を行い、[OK]ボタンをクリックします。
 
例えば、下図のように色を青(赤:0、緑:0、青:255)にして[OK]をクリックしてみます。
[再描画]ボタンをクリックすると、青い光源が設定されます。黄色やオレンジがかった色を設定すると、暖かい雰囲気が表現できます。