2025年 1級建築士 設計製図課題発表

令和7年 一級建築士試験
「設計製図の試験」の課題

庁 舎

[要求図書]

  • 1階平面図・配置図(縮尺1/200)
  • 各階平面図(縮尺1/200)

 ※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。

  • 断面図(縮尺1/200)
  • 面積表
  • 計画の要点等

[建築物の計画に当たっての留意事項]

  • 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
  • バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
  • 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
  • 大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。
  • 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
  • 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
  • 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

[注意事項]

「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合又は不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。

課題検証(第二弾)

1.課題テーマと時代背景

庁舎とは、政府や地方自治体(官公庁)が公共の業務を行うために設置する建物全般を指し、一般的には行政機関のオフィスを指すことが多いです。公共の業務には、行政事務だけでなく行政サービスを提供する窓口業務や政策や予算を決定する議会も含まれます。法令上は、建築基準法の他に「官公庁施設の建設等に関する法律」が適用されます。

官公庁施設の建設等に関する法律第13 条に基づき、国家機関が整備・保全する建築物・附帯施設について、位置・規模・構造の方向性と最低水準を規定することを目的として、「国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準」(平成6年12 月15日建設省告示第2379 号)が定められ、2008 年(平成20 年)に「官庁施設の基本的性能基準(初版)」を策定し、官庁施設の計画に性能規定型の考え方を導入しました。3 年後には東北地方太平洋沖地震があり、耐震性能や防災性能に対する見直しによる改訂や技術の進歩や環境問題や各種政策への対応の改定を経て、2024 年(令和6年)版が制定されています。

  • 策定された基本性能には、次のものがあります。
  • ●構造性能(耐震性・耐久性) : 地震・台風等に対する構造安全性、耐震等級など
  • ●環境性能(断熱・省エネ・ZEB 対応) : 建築物の断熱性、設備の高効率化、ZEB 化など
  • ●利用性能(バリアフリー・快適性) : バリアフリー、動線計画、快適性、視環境、音環境など
  • ●維持管理性能(点検しやすさ、更新容易性) : 点検のしやすさ、設備更新の容易性、劣化対応など
  • ●防災性能(非常用電源、帰宅困難者対応) : 非常用電源、備蓄、帰宅困難者対応、防火区画など
  • また、近年の社会動向から考えられることとして、以下のような背景が考えられます。
  • ●1960 年代~70 年代に建設された庁舎が築50 年以上となり、建替えの時期に入っている
  • ●地域分散型社会の推進に伴い、地方自治体の役割が強化され庁舎再編の必要性
  • ●行政サービスのデジタル化に伴う庁舎のDX化

庁舎

庁舎

2.庁舎について

  • 庁舎(地方自治体の場合)に求められる基本機能として、以下があります。
  • 1.行政サービス機能
  • 2.行政事務機能
  • 3.庁内管理機能
  • 4.議会機能
  • 5.防災・危機管理機能
  • また、近年では従来の基本機能に加えて、以下の機能の付加も注目されています。
  • 6.地域交流・地域連携機能

「庁舎」は、公共性・業務性・防災性・環境性能といった多岐にわたる設計視点を求められる高度な課題です。一級建築士試験ではこれまでに直接的な「庁舎」課題は少ないものの、「公共建築」「多機能施設」の課題を通して類似の計画手法や空間構成の考え方は示されてきました。

エントランスロビー/多目的室

エントランスロビー/多目的室

3.類似課題について

「庁舎」の出題は、過去1990年に「地方都市の庁舎」が出題されています。
[構造種別はRC造一部S造、地下1階、地上3階建て、床面積の合計2,400m2以上、2,800m2以下]

庁舎の建築基準法上の用途は「事務所」となるため、類似用途として2022年(令和4年)「事務所ビル」についても参考となります。[構造種別は自由、階数自由、容積率500%]

また、庁舎の耐震性能を考慮した場合、2024年(令和6年)「大学」の「基礎免震構造」についても参考になります。[構造種別は自由、階数自由、容積率400%]

今年度の「庁舎」は、公共建築であり、容積率から規模を判断する出題の中で、3平面+断面図の出題もしくは、基準階(同一平面が複数階)の出題が考えられます。

4.計画上のポイント

庁舎は、地域住民の行政サービスの拠点としての公共性と、職員による円滑な事務遂行のための業務性の双方を満たす必要があります。そのため、利用者と職員の動線や空間を明確にゾーニングし、相互に干渉の少ない効率的な計画が求められます。

建物構成としては、市民に開かれた窓口やロビーなどの来庁者エリアを1階に配置し、事務室や管理部門は上階に集約するなど、階層的に整理するのが効果的です。加えて、議場や災害対策本部などの特別機能空間については、セキュリティや利便性に配慮しながら、独立性と連携性のバランスを取ることが重要です。

窓口/議会

窓口/議会

建築計画のポイント

  • ①来庁者のアプローチについては、車や自転車によるものも考慮し、利便性と安全性に配慮します。バリアフリーへの対応も考慮し管理サービスのアプローチと交錯しない配慮が必要となります。
  • ②建物の配置については、敷地形状、屋外施設の位置、隣接建物との関係、道路斜線制限などを考慮して決定します。
  • ③動線計画としては、来庁者の動線、行政職員の動線、物品等搬出入の動線を考慮することが必要です。
  • ④環境配慮として、中庭や吹抜による自然採光・通風の導入への対策も考慮の余地があります。
  • ⑤防災拠点として防災備蓄倉庫の設置のほか、災害対策本部機能や救援物資受け入れなどについて考慮する必要があります。

構造計画のポイント

  • 3階建てから6階建て程度までが想定でき、階数による構造部材断面について対応できるようにしておく必要があります。
  • ⑦構造種別は鉄筋コンクリート造が想定されます。架構形式については、純ラーメン架構以外に耐力壁付きラーメン架構についても理解しておく必要があります。
  • ⑧建物用途から、基礎免震構造についても理解しておく必要があります。

設備計画のポイント

  • ⑨設備計画については、設備機器や設備シャフト等の位置に注意が必要です。設備シャフトについては、給排水用シャフト(PS)、空調用シャフト(DS・PS)、電気用シャフト(EPS)をそれぞれ計画する必要があり、その位置及び寸法についても正しい把握が必要です。
  • ⑩ その他、受変電設備(キュービクル)、受水槽、空調設備(空調機械室や室外機置場等)、停電時や消防設備のための非常用自家発電機等が想定されます。設置する場所及びその寸法については正しく理解しておくことが必要です。
  • ⑪ 空調設備は、天井高さが高い空間(5m以上で指導)では天井カセット型の空調機では気流がうまく循環しないことがあるため、床置きダクト接続型や単一ダクト方式を採用し、天井面に設ける吹出口はノズル型で計画するとよいでしょう。また、執務室と窓口が一体となり面積が広く気積が大きくなる為、熱交換をする換気設備としては外調機の採用が考えられます。
  • ⑫ 設置する設備によっては使い勝手が向上したり、災害時の機能が付加されたりすることがあります。設備機器の特性を理解することで、より良い設備提案が可能になります。
  • ⑬ 空調を考える際に、事務所ビルでも出題されたペリメーターゾーン(外壁から5m以内の範囲等)の考え方を再度理解する必要があります。
  • ⑭ 二酸化炭素排出量削減を考慮してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などに適合させる場合、太陽光発電パネルや蓄電池の設置等の対応が必要です。

法規規制のポイント

  • 建蔽率の上限や高さ制限に違反した計画は、「重大な不適合」に該当し失格になります。また、延焼のおそれのある部分や防火区画、避難施設についても、法的規制の中で非常に重要な項目であり、重大な不適合(失格要件)に該当することや、大減点となり足切りとなることもあります。課題文に具体的に記載された法令を遵守することは絶対条件です。
  • ⑯ 近年の出題を考慮すると、建蔽率、容積率や高さ制限(斜線制限等)については正確に対応できるよう算定方法等を再確認しておく必要があります。

図面

図面

5.計画の要点等

例年、計画の要点が7~10問程度要求されます。建築計画(法令含む)・構造計画・設備計画(環境負荷・省エネ含む)において配慮した事項を記述式で要求されますが、重要なのは、実際に計画した建物と記述した内容に不整合がないことです。

建物の計画が優れていても、記述との不整合があれば、採点者の印象を悪くし、大きな減点を受ける可能性が高いと考えます。

計画の要点等の記述については、暗記した内容をそのまま記述するのではなく、設問で問われていることについて、内容を正確に理解した上で的確に記述することを心がける必要があります。さらに、近年の出題傾向としてイメージ図(近年は、平面詳細図・断面詳細図等の要求もある)の記入は必須となっており、記述内容についてわかりやすく図式化することを練習しておくことが必要です。

計画の要点

計画の要点

今年度の課題「庁舎」に対する学習のポイントとしては以下の項目が挙げられます。

  • ⅰ.周辺環境に配慮した計画
  • ⅱ.バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮した計画
  • ⅲ.各要求室の適切なゾーニングと動線計画
  • ⅳ.大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画
  • ⅴ.建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮した計画
  • ⅵ.構造種別に応じた架構形式、スパン割り、構造部材断面の計画、目標耐震性能を理解するとともに基礎免震構造による計画ⅶ. 適切な設備計画
  • ⅷ.法令に適合した建築物の計画
  • ⅸ.記述問題に対応できる正確な知識

以上を踏まえると、「庁舎」に適切に対応した課題対策が、合否を左右する重要なポイントとなります。各地区には必ず庁舎がありますので、実際に訪問し、計画や作図で役立つ施設や設備を具体的にイメージできるよう見学しておくことをおすすめします。

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