建築設備士という資格について
まずは、建築設備士という資格がどういったものなのか仕事内容から見ていきましょう。
建築設備士の仕事内容は?
建築士にアドバイスをする
建築設備士は、名前の通り、建築で使われる設備の専門家です。建築設備には空調、換気、排給水、電気などが挙げられ、これらの設計を建築士が行う時にアドバイスをするのが建築設備士の仕事です。
建築士には建築設備士からアドバイスを受ける義務はありませんが、延べ面積が2000平方メートルを越える建築物の設計の時にはアドバイスを受けるように努めなければならないとされています。
業務独占資格ではない
業務独占資格とは、医師のようにその資格を持っていなければ業務を行ってはいけないという規定のある資格のことです。しかし、建築設備に関するアドバイスは建築設備士の資格が無くても行うことができるため、業務独占資格ではありません。ただし、建築設備士と名乗るためには資格が必要になるので、名称独占資格となります。
建築設備士の平均年収は?
建築設備士の平均年収は約500万円~800万円となっています。
年収は勤める企業の規模や建築設備士以外に取得している資格などによって変動し、大企業に勤めていたり、建築士などの他の資格も取得していたりすると年収が高くなる傾向にあります。
建築設備士試験の難易度は?
建築設備士試験の合格率は、一次試験の学科試験が30%前後、二次試験の製図試験が40~50%、全体の合格率は20%弱となっています。
建築設備士は意味がない?資格取得は本当に必要なのか?
建築設備士の業務は資格が無くても行うことができる上に、建築士も建築設備士に意見を聞く義務は無いとなると、資格を取得する必要はないようにも思えます。
しかし、建築設備士を取得することによるメリットは多くあります。
建築設備士のメリット
防火対象物点検資格者の受験資格が取得可能
防火対象物点検資格者は、防火対象物について、用途や管理状況などを総合的に点検するという役割を持ちます。防火対象物を管理している人は、防火対象物点検資格者に点検をさせてその結果を報告する義務があります。
この、防火対象物点検資格者になるためには講習を受ける必要があり、講習は受講資格を満たしている人が参加できます。建築設備士もこの受講資格の要件の1つになっていて、建築設備士として5年以上 の実務経験があると受講資格を得られます。建築設備士の資格を取ることで更なるキャリアアップが可能になるのです。
就職・転職で優遇される
建築設備士の資格を持っていると、建築設備についての知識が豊富であることが証明できるほか、建築士へのアドバイスを行った時に公的書類に建築設備士としての記名ができるなど、就職・転職で有利になります。また、仕事を始めてからも重宝され、収入が上がるなど優遇されることもメリットです。
建築設備士の将来性は?
需要は増加する見込み
近年の建築設備は複雑化・高度化しており、その傾向は今後も強まっていくと考えられます。元々設計を専門としている建築家がそのような建築設備について自分自身のみで理解することは難しいため、今後建築設備士の需要は増加する見込みとなっています。
また、安全性を重視するクライアントなどでは建築設備士の意見を聞くことを工事の条件にする人も増えています。安全への意識の高まりからも建築設備士の需要は増えるでしょう。
ニーズの多様化
現在の建築は、単に住める、使える建築物ではなく、様々な機能を持った建築が必要とされています。例えば、地球温暖化防止の観点から太陽光発電を利用したエネルギーシステムを取り入れた住宅が注目されており、その設備の導入には建築設備士の知識や技術は欠かせません。
また、病院などの医療福祉のための施設では、空調や電気などの建築設備は必要不可欠で、特に人工呼吸器などを使用している病院では設備の異常が命に関わります。医療福祉の分野でも建築設備士は必要とされているのです。
このように建築設備にも様々なニーズがあり、今後もニーズは多様化すると考えられます。そのような変化に対応するためにも建築設備士は重宝される存在になるでしょう。
建築設備士は設計できない?
建築設備士は、建前上は設計ができず、建築士が行う設計や管理の補助しかできないことになっています。しかし実情としては、建築設備士が設計から技術計算、工事管理や現場でのトラブル対応までを行い、建築士は名前を貸しているだけ、という設計事務所もあるようです。
このため、建築設備士資格を取って実力を備えていけば、建築設備の設計を実質的に行うことは可能というのが現状です。
建築設備士の取得を目指すべき人は?
建築設備に興味がある人
建築設備に興味があり、それに関する仕事をしていきたいと考えている人は、建築設備士の資格は迷わずに取得することをおすすめします。
建築士試験は範囲が膨大なため広い知識を身に付けるような形になっていますが、建築設備士試験では専門的に建築設備について問われるため、かなり高度な知識を得られます。建築士試験の時、試験対策で得られる知識ではすぐに実務を行うことは難しいレベルとなっていますが、建築設備士試験に合格できる知識があればある程度実務も行うことができます。
1級建築士の受験資格を得たい人
建築設備士の資格を持っていると、1級建築士試験の受験資格を得ることができます。1級建築士試験を受験するためには、建築に関する指定科目を履修して大学、短期大学、高等専門学校、専修学校などを卒業した学歴がある、2級建築士の資格を持っている、などの要件を満たすことでも受験資格を得ることができますが、これらを満たすことが難しいけれど、1級建築士資格を取りたいという人は建築設備士を取得すると良いでしょう。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター
「建築士(制度全般)-受験資格-」より
建設会社・設計事務所に転職したい人
転職を検討している人にも建築設備士の資格取得はおすすめです。ここまでにも少し述べてきましたが、建築設備士を持っていることで可能になる業務や手続きは多く、転職時に有利になります。特に設備設計を行う職種で転職を考えている人は、建築設備士の資格を持っていることが条件になっている求人も多いため、取得しておくと良いでしょう。
他の建築資格との違い
ここまで、建築設備士のメリットや取得を目指すべき人などについて紹介してきましたが、目指しているキャリアなどによっては建築設備士以外の資格取得が適している人もいます。そこで、ここからは他の建築資格について紹介して、それぞれの資格取得をおすすめする理由を説明します。
1級・2級建築士
建築士は建物の設計や工事管理を行います。特に1級建築士は設計できる建物の規模に制限がなく、ビルなどの大規模な建築物の設計を行うことができます。建築物の設計をしたい人は建築士を目指すのがおすすめです。
設備設計1級建築士
設備設計1級建築士は1級建築士の資格を持っている人が取得を目指せる、1級建築士の上位資格です。
設計の中でも設備設計に特化した資格で、取得すれば設備設計に関してはかなり高い知識と経験を持っていることを証明できます。ただ、設備設計1級建築士の受験資格を得るためには1級建築士としての実務経験が5年以上必要であるため、受験するまでの道のりは長いと言えます。1級建築士になった後のキャリアアップの方法として捉えておくと良いでしょう。
技術士
技術士は、技術者の技術を証明する資格で、全部で21の部門があります。建築業界の人で資格取得を目指すとすれば、建設部門である技術士の資格を取ることが必要になります。
建設部門の技術士の資格を持っている人の多くは建設コンサルタントとして活躍しています。建設コンサルタントは、公共施設や大型公共施設など、多くの人に影響を与える大規模な建築事業を行う時に、全体の調整や計画、管理を行う仕事です。技術力を活かして大きな事業に携わりたい人はこの資格の取得を目指すと良いでしょう。
建築積算士
建築積算士は、建物を建てる時に必要なコストを計算する積算業務の専門家です。
コスト管理を専門としているため、クライアントからの予算に関する要望を踏まえ、限られた予算の中で最善の建築を提供するということが役割です。コストの側面から建築を支えたいという人は建築積算士の取得がおすすめです。
施工管理技士
建築士が設計を行う専門家である一方で、施工管理技士は工事現場をまとめる専門家です。工事中の安全管理や、原材料費・人件費などの原価管理、工程の進み具合や品質の管理など、現場で必要なことを管理していきます。デスクワークよりも現場での仕事でキャリアアップを目指したい人におすすめです。
ここまでいくつかの資格を紹介してきましたが、この記事を読んだ人は建築設備に興味のある人が多いのではないでしょうか。
設備の「設計」に興味のある人は設備設計建築士、設備の「工事」に興味のある人は施工管理技士の取得がおすすめです。しかし、建設設備士の資格は設備に携わる全ての人に有用な資格となっているので、取得しておくと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか。
この記事では、建築設備士の仕事内容やメリット、将来性と、関連した建築資格について説明してきました。
建築設備士資格は、建築設備に携わる仕事をする人であれば取っておいて損のない資格です。
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