1級建築施工管理技士とは
1級施工管理技士とは国家資格を持った施工管理職の中でも、難易度が高いプロフェッショナル人材です。
施工管理技士の資格を保有していると、工事現場で監督・管理者として働くことができます。
1級施工管理技士と2級施工管理技士の間でも差があり、従事できる現場の規模や特定建設業における専任技術者、監理技術者として仕事を行う権利を持っているかどうかという部分に違いがあります。
【すごい点①】現場での対応力が向上
すごい点①として、現場での対応力が向上することについてお伝えいたします。
現場の本質を理解できる
1級建築施工管理技士の資格を取得することで、現場を本質から理解することができます。本質というのは、建設業法や労働安全衛生法などの法律に関することです。実際に現場で経験していない工事でも、文面上で理解していることによって現場での対応力に差が出ます。本質から理解することができているので、現場での線引きが可能となり、効率よく工事を進めることができます。
現場の幅広い業務で使える
1級建築施工管理技士は担当する業務にも制限が無く、幅広い業務を担います。主に行う業務としては、
- ・建築工事の施工計画の作成
- ・現場の工程管理や安全管理などの工事全体の進行の管理、監督
- ・発注者との打ち合わせ
- ・現場の技術者や職人の監督、指導
- ・資材の発注
- ・予算の管理
など、仕事内容は多岐にわたります。
監理技術者資格が取れる
監理技術者とは、日本の建築業において現場の水準を確保するべく配置される技術者のことを言います。2級建築施工管理技士は主任技術者までの資格となります。しかし、1級建築施工管理技士は主任技術者、監理技術者のどちらにもなることができます。
また、建築現場には監理技術者または主任技術者を設置することが法律上義務付けられています。請負代金の額の合計が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となると監理技術者、それ以外の場合は主任技術者の設置が必要になるため、企業からも必要とされています。さらに、現場に1級建築施工管理技士がいると、技術力の評価において資格者1人当たり5点が加算されます。(2級建築施工管理技士は2点)この点数は公共工事の受注をする際に技術力として評価されるため、企業の評価に大きく貢献することができます。
しかしながら、1級建築施工管理技士は建築現場を統括する上で重要な役割を担っているのにも関わらず、現在は監理技術者も高齢化していてどの現場でも不足しているのが現状です。
1級建築施工管理技士の年収
1級建築施工管理技士の年収は年齢によっても異なりますが、460万円以上だと言われています。
1級建築施工管理技士では、専任技術者、監理技術者として責任の伴う業務にあたっているため年収が高くなる傾向はありますが、それだけ残業や休日出勤しなければならない場合もあるのが実情です。
ただ、年収面や給与面で考えると資格を保有しているか、保有していないかによって、大きく差が出る部分ですので、給料を上げたい、昇進したいという方は1級建築施工管理技士を取得しておくべきでしょう。
業界全体として人手不足であるため、転職やより給与面の待遇がいい会社に入ることも十分可能となっています。
【すごい点②】1級建築施工管理技士は合格が難しい
すごい点②として1級建築施工管理技士は合格が難しいことについてお伝えいたします。
全範囲の勉強が難しい
1級建築施工管理技士第一次検定の試験形式はマークシート方式で、合格するには全体の特典の60%以上、かつ施工管理法(能力問題)の得点60%以上が必要です。
配点は1問につき1点で、回答する問題数は全体で60問・施工管理法の能力問題で6問あり、正答数が全体で36問以上、施工管理法の能力問題で4問以上で合格となります。
試験範囲が極めて広く、科目は
- ・建築学等:建築学、共通、施工(躯体工事)、施工(仕上げ工事)
- ・施工管理法:施工管理法、施工管理法(能力問題)
- ・法規:法規
上記の科目の中で、必須科目は共通、施工管理法、※施工管理法(能力問題)の3つのみです。それ以外の建築学・施工(躯体工事)・施工(仕上げ工事)・法規の中から問題を選択し回答する形式です。
※施工管理法の能力問題は令和3年度の改正で追加され、主な変更点は従来の実地試験で問われた能力問題が追加された点です。
1級建築施工管理技士第二次検定の形式は、マークシート方式と記述式で合格基準は60点以上であり、問題は6問出題され、配点は非公開です。試験時間は3時間、出題科目は
- ・施工管理法:施工管理法(能力問題・記述)、施工管理法(五肢択一の選択)
上記に記載した通り、受検範囲は極めて広いですが、勉強を一切行わず試験に挑むことはできるだけ避けましょう。苦手科目だとしても一通りの基礎知識は理解しておき、苦手分野で一転も点数が取れないということが起こらないようにすることが大切です。
苦手分野が中心的に出題されたときに、1点も取れないということが生じると合格はまず不可能となるでしょう。
学習を始めるのが遅いと合格は厳しい
1級建築施工管理技士第一次検定の合格率は、令和3年:36.0%、令和4年:46.8%、令和5年:41.6%で、試験制度が変更となり第一次検定となった令和3年からの平均合格率は41.5%です。
また、第二次検定の合格率は令和3年:52.4%、令和4年:45.2%、令和5年:45.5%で、同様に第二次検定となった令和3年からの平均合格率は47.7%です。
さらに、上記までに述べた通り、1級建築施工管理技士の試験範囲は広く、難易度は極めて高いです。短期間の学習で合格できる試験ではないため、前もって計画的に学習を開始する必要があります。
学習を開始する最適な日程は、『今日』です。
試験の合否は1点が左右する場面も多々あるので、1点でも多く取るために、今日から一日でも早く学習を始めましょう。
経験記述が難しい
この経験記述というのは、1級建築施工管理技士第二次検定で出題される、自分が経験した実務を記述するものです。この第二次検定の合否は、施工経験記述で決まると言っても過言ではないほど大事な設問になります。この経験記述は自分が経験したこととはいえ、課題に沿って文章を書くとなると、すんなり書くことができません。そこで大切になるのが、事前に文章を書いておくことです。試験本番で文章を考えると時間が足りなくなってしまいますので、事前に文章をいくつか作成し、試験対策をしておくことが大切です。
1級建築施工管理技士の難易度・合格率
1級建築施工管理技士は例年、第一次検定は25,000人前後、第二次検定では15,000人前後が受検している試験です。
試験制度が変更となった令和3年度から直近3年間の平均合格率は、第一次検定が41.5%、第二次検定が47.7%となっており、どちらも2分の1以上の確率で不合格となってしまいます。
第二次検定では第一次検定合格者の中でもさらに半数以上が不合格となっているため、1級建築施工管理技士を取得するのはそれほど簡単なものではないということがわかります。
入念な対策を行い、しっかりと試験に向けて準備を行っていきましょう。
【すごい点③】建築・建設業界では必要な資格
ここでは、すごい点③として、建築・建設業界では必要な資格であることをお伝えいたします。
監理技術者・主任技術者になるために必要な資格
指定建設業で監理技術者になるためには、業種ごとに定められている資格要件を満たすことや、実際の工事現場で実務経験を重ねていくことが求められます。さらに、1級建築士、1級施工管理技士、技術士などの国家資格が必要になるのです。施工管理技士の場合、業種に合ったものを取得します。例えば、土木工事業で管理技士になるためには1級土木施工管理技士の資格が必要になります。
また、主任技術者になるためには
- ①指定された1・2級の国家資格を持っていること
- ②一定期間以上の実務経験があること
- ③指定された登録技能者の講習を受けていること
監理技術者として活躍できる資格
指定建設業において監理技術者になるためには、1級国家資格等の保有が必要になります。
下記に、具体的な資格をまとめます。
- ・土木工事業:1級土木施工管理技士、1級建設機械施工技士、技術士
- ・電気工事業:1級電気工事施工管理技士、第一種電気工事士、1級計装士、技術士
- ・管工事業:1級管工事施工管理技士、1級計装士、技術士
- ・鋼構造物工事業:1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級建築士、技術士
- ・舗装工事業:1級土木施工管理技士、1級建設機械施工技士、技術士
- ・造園工事業:1級造園施工管理技士、技能検定造園技能士、技術士
主任技術者として活躍できる資格
ここでは、主任技術者として活躍できる資格例を記載していきます。
- ・建設機械施工管理技士
- ・1級及び2級土木施工管理技士
- ・技術士
- ・建築士(1級、2級)
- ・木造建築士
- ・建築機械施工技士
- ・とび技能士、左官技能士、型枠施工技能士(1級、2級)
- ・地すべり防止工事士
- ・1級設備士
- ・鉄筋施工技能士(1級、2級、鉄筋組立て作業)
- ・ガラス施工技能士
- ・内装仕上げ施工技能士
参考:SKILL NOTE
「主任技術者と監理技術者の違い」より
主任技術者として活躍できる資格
年収について解説した部分でも触れましたが、1級建築施工管理技士を保有しているかどうかによって転職や昇進・昇給の有利、不利が大きく異なります。
業界全体として人手不足となっており、常に人材を募集している点や、若ければ若いほど転職に有利となっている業界事情があるため「転職したい」「今よりも給料を上げたい」という方は、1級建築施工管理技士の資格を持っておくだけでも自分が希望する会社への転職や給料UPにつなげることができます。
1級建築施工管理技士の資格を取るには
計画性をもって長期的に学習を進める
学習を進めるうえで大切なことは、スケジュール管理を徹底し計画的に学習を進めることです。
1級建築施工管理技士の試験は、第一次検定も第二次検定も1年に一度しか受検できないため、一度不合格になってしまうと1年間学習を継続しなければなりません。
一度で受かるためにも自分がいつから勉強を始めて、一日どのくらいの勉強時間を作って進めるのかという計画性が大切です。
1級建築施工管理技士は100~400時間の勉強時間が必要なため、1日2時間学習する場合は50日~200日、1日3時間学習する場合は33日~133日と1ヶ月から半年程度の時間を要することになります。
現状の自分の生活を振り返り、一日どのくらい学習に充てられそうか考えてみるべきでしょう。
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まとめ
1級建築施工管理技士は出題範囲が広く、難易度が高いため、計画を立てて学習に取り組むことが必要になります。資格を取得することができた時、実際に現場で経験していない工事でも現場での線引きが可能で、効率よく工事を進めることができ、企業の規模評価に大きく貢献することができます。
また、1級建築施工管理技士の資格を取得することで、自ら新たに営業所を立ち上げたり、その場合に必要な専任技術者になったりすることができます。難しい試験ではありますが、資格を取得してからのメリットは大いにあるため、自分に合った試験対策をを見つけ、資格取得を目指しましょう。