建築士の平均年収はどのくらい?
建築士の平均年収は、働く環境、すなわち企業規模によって変わるのが一般的です。建築士の中には、大きく一級建築士、二級建築士、木造建築士と資格の種類が分かれています。
それぞれの建築士における平均年収について、説明します。
一級建築士の平均年収
建築士の中で高い収入が見込める一級建築士でも、働く環境によって収入が変化します。
政府の算出している統計によると、企業規模が1,000人以上の会社では、月給が約51万円、賞与が228万円と、およそ年収800万円超が平均です。一方で、100人~999人の会社では、月給が38.9万円、賞与が151万円と、合計617万円程度です。また、10人~99人の規模の会社では、月給が38.8万円、賞与が103万円と、合計568万円です。
このように一級建築士の中でも、勤めている企業や事務所の規模によって大きく年収が変化することがわかるでしょう。
参考:政府統計の総合窓口
「賃金構造基本統計 調査令和元年以前 職種DB第1表」より
二級建築士の平均年収
二級建築士の平均年収は、約350~480万円です。
国税庁によると日本の給与所得者の平均年収は458万円になるため、年収は平均的と言えるでしょう。二級建築士は、以下のような知識や経験があれば、人材価値がより高まり、給与が加算される可能性が高まります。
- ・計技術における専門知識がある
- ・AIや耐震といった先進技術にも明るい
- ・コンペでの入賞実績がある
- ・業界における経験年数が長い
建築士は平均が低い?
建築士の年収は、資格の種類や就職先などで異なります。
まず、建築士の資格は、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3つで、平均年収は以下のとおりです。
資格 | 平均年収 |
---|---|
一級建築士 | 約800万円~ |
二級建築士 | 約400万円~500万円 |
木造建築士 | 約350万円~480万円 |
国税庁によると日本の給与所得者の平均年収は458万円になるため、各資格の平均年収は決して低くありません。
一級建築士であれば、高い年収を得ることができるでしょう。また、大手ゼネコン主導の土地開発プロジェクトと、戸建の建設では根本的に動く予算が違うように、仕事の規模も建築士の年収を左右します。
建築士の年収に男女差はある?
一級建築士をはじめ、建築士の年収に男女差はあるのでしょうか。
建築士の男女別の年収について、説明します。
現状は男性がやや高い
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査」によると、一級建築士の年収は、男性が年収約653.5万円、月収43.2万円に対し、女性は年収が約560.9万円、月収が36.3万円です。
一方、平均ボーナス支給額は男性150万円、女性138万円と月収よりも差は小さいです。しかし、全体的に男性の一級建築士の方が収入は高いです。
女性一級建築士・二級建築士の人数が少ない
一級建築士の平均年収において、男性が高い理由の一つとして、女性の一級建築士・二級建築士の人数が少ないことが挙げられるでしょう。
一級建築士の登録者数のうち、女性の一級建築士はわずか26.3%です。これは、平均年収を上げる要因となる一級建築士や、経験豊富で独立開業に成功している一級建築士の数が少ないと考えられます。また二級建築士の登録者数のうち、男性は65.3%に対して女性の二級建築士は34.7%です。
このため、男性よりも女性の一級建築士の年収が少ないのは、待遇が悪いという訳ではないでしょう。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター
「直近5年間の一級建築士試験結果」より
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター
「過去5年間の二級建築士試験結果」より
女性建築士の増加を国も後押ししている
建築士をはじめとした建設業界の女性が少ないことや、女性の年収が低いことに対して、近年では国も女性の増加を後押ししています。
国土交通省は、令和2年に「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を発表し、建設業界で女性が働きやすくなるような政策を始めているのです。
実際に、直近の一級建築士試験の試験結果では、女性の最終合格率が30.8建築士になっており、現状の女性の一級建築士の登録者の割合である13%を大きく上回る比率です。このような国の後押しもあって女性建築士は増加傾向にあります。
また、今後働く環境が整備されると、女性一級建築士の非正規雇用が減り、男性との収入面での差が縮んでいくことも考えられるでしょう。
参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター
「直近5年間の一級建築士試験結果」より
参考:国土交通省
「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」より
建築士の年収に年齢や経験年数で差はある?
資格の種類や勤め先以外にも、建築士の年収を左右する要素があります。
それは、年齢や経験年数です。
つまり、建築士としてキャリア形成を考えるなら、10年、20年先を見据える中長期的な目線が必要です。ここでは具体的に、年収と経験年数の2つの観点から建築士の年収がどう変化するかを見ていきます。
年齢による収入の差
建築士の年収は、年齢とともに増える傾向があります。
一級建築士を例にとると、20代のスタート年収が391.7万円であるのに対し、ピークに達する45〜59歳では807.4万円と、年収の差は2倍です。定年を迎える60代以降に下降し、70代以降には、初任給と同程度の年収になります。各世代の年収をまとめると以下のようになります。
年齢 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 |
---|---|---|---|---|---|---|
年収 | 447.9万円 | 53.6万円 | 738.7万円 | 779.8万円 | 530.2万円 | 397.9万円 |
経験年数による収入の差
建築士としての経験年数も、収入に大きな差を及ぼします。
まず、月収は勤続年数が長くなればなるほど増加します。年間ボーナスも、1年目が月収2ヵ月分程度であるのに対し、勤続15年を超えると月収3ヵ月分です。各世代の月収と年間ボーナスがどのように変化するか、以下の表にまとめました。
経験年数 | 0年 | 1~4年 | 5~9年 | 10~14年 | 15年~ |
---|---|---|---|---|---|
月収 | 27.6万円 | 30.5万円 | 39.2万円 | 41.6万円 | 41.4万円 |
ボーナス | 71.4万円 | 120.8万円 | 132.5万円 | 140.9万円 | 138.7万円 |
以上のことから、理想的な年収を得ながら建築士で活躍するポイントは以下の3つです。
- 1.建築士の資格は若いころに早く取得する
- 2.希望年収や業態を明確にする
- 3.自分にとって働きやすい職場に在籍する
建築士として理想の年収を得るには、知識や技術を磨き、より長く働く必要があります。キャリアプランは、中長期的な目線で立てることを心がけましょう。
建築士で年収1,000万円を超えることは可能?
建築士の平均年収を確認すると、建築士で年収1,000万円を超えるハードルは比較的高いです。
大手ゼネコンで順当にキャリアアップする
建築士の収入は、所属する事務所や企業の規模に応じて高くなるのが特徴です。
このため、ベースの収入の高さが期待できるゼネコンなどの大手企業に就職し、順当に成果を出してキャリアアップすることで、40代頃では年収1,000万円を超えることも可能です。しかし、年収が高く人気も高いため、簡単に就職できるわけではありません。
ゼネコンを目指す方の中には、高い収入が一つの理由であることも多いです。
独立して開業する
独立して開業をした場合、成功すると年収1,000万円に止まらず、企業に所属している時よりも、大幅な収入のアップを見込むことができるでしょう。
企業に所属している場合、大型の案件を受けたとしても、会社の諸経費や利益で引かれ、最終的に給料に反映される額は少なくなってしまいます。
対して、個人で開業した場合、案件で得た収益を全て自身や自身の会社に還元することができます。
指名で設計の依頼を受けるような人気と実力を兼ね備えた建築士になることができれば、個人として高い収入を得ることも可能です。
一方で、企業に属していない分、リスクは大きく、実力がなければ年収が下がってしまうことも考えられます。
また、企業に属している場合は、給料が大幅にアップダウンすることは比較的少ないですが、独立している場合、案件の数が収入に直結するため、大きく収入が落ち込むリスクもあります。
建築士の年収を上げるポイントは?
建築士の種類や働き方によって、年収は変化しますが、年収1,000万円を超えることも可能です。
では、年収を上げるためには、どのようなことが大切なのでしょうか。建築士として年収を上げるためのポイントを紹介します。
大手のゼネコンに就職する
建設業界で、最も平均年収が高い企業は、大手のゼネコンです。
このため、安定して年収を上げることを望むのであれば、大手のゼネコンへ就職すると良いでしょう。
年功序列の傾向が強いことも多く、若いうちから大きな収入を残しにくいものの、話題性のあるような大きな建造物の工事に一貫して携わることもできるため、大きなやりがいを感じる人も多いです。
年収を上げるために、まずは大手のゼネコンに就職することを目指すと良いでしょう。
ハウスメーカーで良い成績を残す
建築士として、年収を上げるために、ハウスメーカーで良い成績を残すことも有効です。
具体的には、自身の設計スキルによって顧客を獲得することです。
ハウスメーカーで自身のデザイン力や設計力を強みに案件を獲得できるようになると、インセンティブを多く貰うことができるようになるため、収入がアップする見込みが高くなります。
年収を上げるために、ハウスメーカーに就職し、成績を残すことも効果的です。
規模の大きな設計事務所に就職する
将来的に独立を計画していたり、自身の強みを磨いたりしたい場合には、規模の大きな設計事務所に就職することも有効です。
収入は、ゼネコンよりは平均的に低いものの、安定した収入を得ながらも、ゼネコンよりもスピード感や裁量を持って様々な案件に関与し、経験を積むことができるケースも多いです。
まずは規模の大きい設計事務所に就職してスキルを高め、将来的に独立して成功し、年収を高めるというキャリアを目指す方法もあります。
独立して個人事務所を開業する
ゼネコンや設計事務所で実力をつけた後は、独立して個人事務所を開業する選択肢もあります。開業して成功することができれば、企業に勤めている時よりも、大幅に高い収入を得ることができるでしょう。
しかし、実力や景気によって大きく収入を落とすリスクもあります。
また、個人事務所を開業した場合、建築士としての業務だけでなく、経営者としての業務も必要になるため、設計のみに集中したい、という方には向いていない可能性もあるでしょう。
一級建築士の資格を取得するには?
日建学院の一級建築士対策講座を受講する
日建学院では一級建築士のための講座を用意しています。
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映像講義というと受けっぱなしで身にならないイメージの方もいるかもしれませんが、日建学院の映像講義は生の講師による指導よりも合格率が平均10%高いというデータがあるほど映像講義の質にこだわりぬいています。
また、脳の仕組みにこだわって記憶が定着するような学習システムを取り入れており、知識を忘れずに記憶していくことが可能となっています。
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映像講義や学習システム、教材まですべてに妥協しない指導を提供しているのが日建学院です。
少しでも気になった方は日建学院での一級建築士対策をご検討ください。
まとめ
建築士は、非常にやりがいがあり、魅力的な職業です。
男性でも女性でも、一級建築士になれば日本人の平均年収よりも高い収入を得られる可能性が高いです。また、大手ゼネコンで出世したり、独立して個人事務所を開業したり、という選択肢をとることで、年収1,000万円を超えることも可能です。
しかし、建築士になるには、国家試験に合格する必要があります。
このため、建築士試験の対策に関するプロのアドバイスや合格実績の多い試験対策講座を利用することがポイントです。
建築士を目指す方は、独学では知ることのできない試験対策の方法を知り、効率的に対策をすることが大切です。