設計士とは?建築士との違い
設計とは、建築士法により、以下のように定義されています。
「建築物の建築工事の実施のために必要な図面(現寸図その他これに類するものを除く。)及び仕様書を作成すること」
設計士とは、上記で示している「設計」を行う人のこと全般を指し、具体的な資格を示すものではありません。
一方で、建築士は、一級建築士、二級建築士、木造建築士などの国家資格があり、このような資格を保有している人が、建築士です。建築士は、建造物の設計を行うことがメインの仕事であるため、「設計士」でもあるのです。
建築士は国家資格
建築士は、国や都道府県知事からの認可を受けて取得する国家資格です。取得には専門的な知識を幅広く必要とする、難易度の高い試験に合格する必要があります。また、建築士の中でも設計ができる建造物の種類や規模に応じて、資格が分かれています。
一級建築士
一級建築士は、国土交通大臣からの認可を受けることで取得できる国家資格であり、設計する建物に制限がないことが特徴です。
このため、一級建築士にしか設計することができない建物も多いです。
面積の広いショッピングモールや、高いビルなどは一級建築士以外に設計を手がけることはできません。
二級建築士
二級建築士は、国土交通大臣の認可を受ける一級建築士とは異なり、都道府県知事からの認可を受けることで取得することができる国家資格です。
二級建築士は、一級建築士のように大きな建物や高いビルを設計することはできませんが、戸建て住宅程度の大きさであれば、設計することが可能です。
木造建築士
木造建築士も、二級建築士と同じく、都道府県知事からの認可を受けることで取得することができる国家資格です。
木造建築士は、木造の建築物に関する設計しか行うことができません。
設計士と建築士の年収の違い
設計士は、国家資格ではないのに対し、建築士は国家資格です。
では、設計士と建築士の年収は、どのくらい違うのでしょうか。
設計士と建築士の年収の違いについて、紹介します。
設計士の年収
設計士の年収は、基本的には建築士の平均年収よりもやや低いです。
設計士の中でも資格を保有しているのが建築士であるため、建築士を除いた設計士のみで考えると、設計士は資格を保有していないため、平均年収が下がる傾向にあります。
設計士の年収は平均350万円程度と言われています。規模が大きい会社だとしても400~500万円程度であるため、建築士の資格を取得できるのであれば取得しておく方がいいと言えるでしょう。
建築士の平均年収
建築士の中でも、公的なデータがある一級建築士について、説明します。
政府の算出している統計では、一級建築士における収入は、企業規模が1000人以上の会社では、月給が約51万円、賞与が228万円と、年収およそ800万円超が平均です。
一方で、100人~999人の会社では、月給が38.9万円、賞与が151万円と、合計617万円程度です。さらに、10人~99人の規模の会社では、月給が38.8万円、賞与が103万円であり、合計568万円です。
このように、建築士の平均年収は、設計士全体で見た時よりも、高い傾向にあります。
参考:政府統計の総合窓口
「賃金構造基本統計 調査令和元年以前 職種DB第1表」より
設計士と建築士の平均年収を比較すると
設計士と建築士の平均年収を比較すると、どのような金額差になるのでしょうか。
ここでは設計士と建築士の平均年収を比較した表を用いて解説いたします。
設計士 | 建築士 | |
---|---|---|
規模の大きい会社 | 400万円~500万円程度 | 800万円程度 |
規模の小さい会社 | 350万円程度 | 600万円程度 |
設計士の平均年収が350~500万程度に対し、建築士は会社の規模が小さくても600万程度は見込むことができます。
そのため、建築士の資格を取得しておいた方が年収は上がると言えるでしょう。
建築士の年収について詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。
設計士と建築士の仕事内容の違い
設計士と建築士では、仕事内容にどのような違いがあるのでしょうか。
設計士と建築士の仕事内容の違いについて紹介します。
設計士の仕事内容
設計士の仕事内容は、設計業務だけではありません。
以下では、設計士の仕事内容に関して具体的に解説します。
小規模の木造建築物の設計
設計士は、建築士になっていない場合は、資格が必要な設計の業務を行うことができません。
このため、小規模な木造建築物の設計を行うことも多くなるでしょう。
建築士の業務補助
建築士の資格を保有していない設計士が、建築士が携わるような大きい建築物の設計に全く携わることができないわけではありません。建築士の業務の補助として、設計の一部を担当したり、サポートをしたりする業務があります。
建築士の資格を保有していない設計士は、このような業務を通じて建築士試験の勉強をすることもあるでしょう。
施主との打ち合わせ同席・書類作成
設計業務以外の部分としては、施主との打ち合わせなどを通じて、要望をヒアリングしたり、議事録を作成したりする業務があります。
設計の実務ではなく、サポート業務、事務的な仕事が多くなる可能性もあるため、注意しましょう。
建築士の仕事内容
建築士は、設計や建築だけでなく、様々な仕事があります。
建築士の具体的な仕事内容について、紹介します。
設計図の作成
建築士におけるメインの業務は、設計図を作成することです。
一級建築士、二級建築士、木造建築士はそれぞれ、扱うことができる建造物の範囲に基づいて、設計を行います。建築士になると設計をリードすることができるため、構造的な部分を担保する他、デザイン面においても、自分の意思を反映させることができることも多いです。
行政の手続き
建築に関しては、地域によって様々なルールがあります。
例えば、景観を守るために一定以上の高さの建造物が禁止されていたり、看板の色味が決められていたりするケースです。建築をする上では、このような地域の条例をあらかじめ確認したり、建設許可や道路の使用許可などの手続きを行ったりする必要があります。
このような業務を行うことも、建築士の仕事です。
現場管理・指示・現場監督
建築士は、建築物を設計するだけではなく、設計図通りに建造物が出来上がっているかを監視する役割も担います。このため、現場の管理、現場監督的な立場で、建築現場に足を運ぶことも多いです。
建築士は、設計図を作成するだけでなく、行政の手続きを行ったり、現場監督を行ったりする仕事もあるのです。
設計士と建築士の仕事を比較すると
設計士と建築士の仕事内容を比較するとどのような違いがあるのでしょうか。
資格を取得していない設計士と資格を取得している設計士では、具体的にどのような違いがあるのか解説いたします。
設計士 | 建築士 |
---|---|
小規模の木造建築物の設計 | 設計図の作成 |
建築士の業務補助 | 行政の手続き |
施主との打ち合わせ同席・書類作成 | 現場管理・指示・現場監督 |
上記を見比べていただくと、設計士は「小規模の木造建築物の設計」の場合のみ設計が可能に対し、建築士では一級建築士、二級建築士、木造建築士それぞれ定められた規模の設計ができることがわかります。
また、建築士が行政の手続きという、責任ある仕事に携われるのに対し、設計士は建築士の業務補助までしか対応することができません。
建築士には現場の監督や指示を行えるという権利も持っています。
比較したときに建築士の方が、規模が大きく責任感がある仕事に就けることがわかるため、設計士よりも規模が大きくやりがいのある仕事を求めるのであれば建築士の資格を取得しておく必要があります。
設計士になるには?
設計士は、設計だけではなく様々な仕事を行います。
では、設計士になるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
設計士になるために必要なことを紹介します。
設計士は資格が必要ない
設計士は、あくまで「設計」の業務に携わる人全般を指す言葉であり、特定の資格があるわけではありません。
このため、設計士になるためには、設計の勉強を学ぶことができる大学や専門学校に通った後、設計事務所や工務店などに就職するケースが多いでしょう。
設計士のキャリアとは
設計士は、最終的なゴールとして、設計の有資格者である建築士を目指すことが多いです。
理想のキャリアとしては、建築系の大学を卒業し、建築士が多く所属する企業や設計事務所で実務経験を積み、一級建築士の資格取得を目指す流れです。
一級建築士は、設計士としての実務経験が2年以上ないと免許を登録することができません。
このため、2年間は設計士として、一級建築士の免許登録要件として指定されている実務経験を積むのも良いでしょう。
一級建築士は、難易度の高い資格であるため、試験対策を戦略的に進めないと、合格することが難しいです。このため、自身のみで試験対策を行うのではなく、一級建築士試験の試験対策のプロの知見を活用することが大切です。
一級建築士の試験対策において、通常では知ることができないノウハウを取り入れ、プロのアドバイスを元に効率良く対策を進めるのが合格までの近道になるでしょう。
建築士の取得を獲得するには
設計士と比較して建築士の方が、給料が高く、行える仕事の範囲が広がるということがわかったと思います。
ただ、建築士は資格の取得が必要なため、勉強を一人で進められるか不安な方もいるのではないでしょうか。
そこで、日建学院の建築士取得講座について解説します。
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まとめ
設計士は、建築士を含む概念であり、建築物の設計に携わる人全般のことを指します。
設計士になるのは建築士よりもハードルが低く、建築士を目指す人が、まずは設計士として実務経験を積むというケースも多いです。建築士にならずに、設計士のままでも設計業務に携わることはできますが、特定の規模以上の建築物の設計に携わることができません。このため、設計士として様々な経験を積み、将来的には建築士を目指す方も多いです。
しかし、建築士の資格を取得するのは簡単ではなく、設計士として働きながら独学で建築士試験の対策を進めることも難しいです。設計士として働きながら建築士を目指す場合は、効率良く試験対策を進めるためにも、試験対策講座を利用することも大切です。
試験対策講座は、過去の建築士試験の傾向や結果を元に、戦略的な試験対策を考えたプロのアドバイスを取り入れて試験対策をすることができるため、利用すると良いでしょう。